最近は広告を外注する企業が増えています。
しかし、その広告は本当にガイドラインに違反していないでしょうか?外注先によっては、明らかにガイドライン違反の広告を出稿するケースもあるなど、こうしたところで出稿者が「割を食う」可能性がある場合もあります。
今回は、そんな時に自社広告担当部署で使える簡単なチェック方法をご紹介します。
目次
そもそもガイドラインとは?
ガイドラインとは、各業界や広告プラットフォームが定める「広告を制作・掲載する際に遵守すべきルール」のことです。
これらは、社会的な常識や法律に照らし合わせて策定されており、違反した場合にはペナルティが課される可能性があります。
まずは、その概要から具体例まで解説していきます。
ガイドライン=各業界やプラットフォームで遵守すべきルール
まず、そもそもですが、広告には様々な種類があり、それぞれに対してガイドラインが存在します。
例えば、テレビCMや新聞・雑誌などの紙媒体では、「景品表示法」「薬事法(薬機法)」といった法律に基づいた広告基準が存在しますし、インターネット広告であればこうした法律の規制の他、出向媒体や業界団体が定めるガイドラインが多数存在します。
広告ガイドラインの例
それぞれの業界や広告プラットフォームにより、ガイドラインは異なります。
例えば、医療業界における広告は厚生労働省による「医療広告ガイドライン」や「薬機法」などに基づいて制限されています。病名を挙げた広告や、治療効果を強調した広告などは規制の対象です。
また弁護士業界では、日本弁護士連合会(日弁連)により「業務広告に関する指針」が存在します。これは、弁護士が自身の業務内容や能力を適切に宣伝するためのルールを定めたものです。
詐欺的な誇大広告などを行った場合、罰則を受けるケースがあることに注意しましょう。
さらに、大手IT企業やマスコミの役員等が理事を務めるJIAA(日本インタラクティブ広告協会)では、広告に関するさまざまなガイドラインやステートメントを発表しています。
「広告の内容は真実であること」「広告は社会の良識・道徳に反しないこと」など、より詳細なルールが定められています。
ガイドライン違反は行政処分があるケースも
ガイドラインに違反すると、最悪、行政処分を受けることもあります。
特に、ネット広告の場合は一度行政処分を受けると同じ広告を出すことが出来なくなるケースも多く、さらに炎上リスクもあるため、慎重にならざるを得ません。
こうした広告についてガイドライン準拠で制作するのが広告屋さんの仕事なわけですが、最近はあまりこうしたガイドラインを知らずに肌感覚で広告を出してしまっている業者や、あるいは担当者があまりにも若いなどで過去にガイドライン違反となった事例を知らずに二の舞とるケースもあります。
こうしたことにならないように外注先はよく選び、そして発注者としても注意喚起したいところではあります。
とはいえ実際問題、広告のプロです!と言われればそれまでで、信じて発注してしまうケースもありますので、ここはもう自社でもある程度自衛策を取るほかありません。
ガイドライン違反の事例
それでは、実際にどのような事例があるのか見てみましょう。
※特定の企業団体に結びつかないよう、フィクションにしてあります。
【1】:シミの無い白い肌へ!というフレーズで出稿した場合
化粧品会社A社は、自社の商品である基礎化粧品シリーズの広告として、以下のような広告を外注に作成させました。
・商品名:『美白クリーム』
・キャッチコピー:「シミのない白い肌へ!」
・画像:顔写真+全身写真のビフォーアフター
・説明文:「シミの原因となるメラニンの生成を止める成分配合」
広告の仕上がり自体は素晴らしい出来でしたが、結果的にこの広告は差し止めとなります。
NGポイントは以下。
・「シミのない白い肌へ!」というキャッチコピーは優良誤認の恐れがある。
・「メラニンの生成を止める成分配合」という表現は、薬機法に抵触する恐れがある(というか高い)。
つまり、この広告はどれだけデザインが洗練されていたとしてもガイドラインに頭から突っ込んで違反しておりますので、当然のごとく却下されてしまいます。
また、仮にOKが出た場合でも、広告主が想定している効果が得られるかどうかは微妙なところでしょう。
というのも、仮に出稿出来たとしても後から関係機関より注意指導が来る可能性が高いためです。
【2】:「飲むだけでマイナス10kg!痩せられるサプリ」というフレーズで出稿した場合
ダイエット食品メーカーB社では、自社の商品であるサプリメントシリーズのプロモーションのために、以下のような広告を外注に依頼し、作成しました。
- 商品名:『スリム&Goodプロポ(※仮名)』
- キャッチコピー:「飲むだけマイナス10kg!痩せられるのに美乳になるサプリ」
- 画像:女性の上半身で、下着を着用している画像のビフォーアフター
- 説明文:「医薬品なみ!?バストアップしながら-10kg!女性らしいメリハリボディになれる」
広告を訴求する人間として、あるいは開発元の立場に立てば言いたいことはとても良くわかりますが・・・NGポイントは以下です。
- 「飲むだけでマイナス10kg!痩せられるサプリ」というキャッチコピーは薬機法違反の恐れがある。
- 「バストアップ」についての記述は作用機序が明確でなく、広告としては厳しい
- 「医薬品なみ!?」の記述も、そもそも医薬品でないことから薬機法に抵触する恐れが高い(というより、ほぼ確実に抵触します)。
なお、この広告を制作していた広告会社は他社からの依頼でも同様の振り切った広告制作を行っており、最終的に某アドネットワークから商品単位で広告出稿の永久BANを受けてしまいました。
※最近はアドネットワーク(一般的にはLAP・LINE AD PLATFORMなど)側での広告掲載審査も厳しくなっており、こうした商材単位での出入り禁止も増えています。
外注に出した広告がガイドライン違反かどうかを調べる方法
では、具体的にどうやってガイドライン違反かどうかを調べればいいでしょうか?
実は、ガイドライン違反か否かを判断するにはいくつかの方法があります。
ガイドラインと照らし合わせる
1つ目は、「ガイドラインに照らし合わせてチェックする」ことです。泥臭いですが、確実です。
例えば各媒体が出している「広告表現ガイドライン」はまず基本的な部分として押さえておきましょう。
これは「各媒体における広告の表現に関するルールを定めたもの」ですが、これに沿っているかを確認すればいいわけですね。
しかし、ここで注意が必要なのは、広告表現ガイドラインはあくまで「広告における最低限のルール」であり、必ずしも全てのケースに当てはまらないということです。
たとえば、ガイドラインの文字だけ見れば規制を上手くすり抜けているように見えても、媒体ガイドラインの前提として存在する薬機法関係のガイドラインや規制、その他、医療広告ガイドラインに引っかかる可能性はあります。
媒体担当へ問い合わせる
2つ目は直接、広告出稿媒体の担当に問い合わせることです。
広告出稿側に直接連絡して、その広告が本当にガイドラインに違反していないかを確認するわけです。
ただし、広告出稿側がガイドライン違反を把握していなかったり、あるいは把握していても「個別には回答できない」とされたりする可能性もあります。また、大きな媒体になればなるほどこうした個別の回答が得られないケースも多いため、実効性としてはさほど高いものではありません。
【おすすめ】広告のプロに聞く
3つ目は「薬機法に対応している広告のプロに聞いてみる」です。
一種のスポットコンサルのような感じで、広告業界の事情に詳しい人に質問し、その上で判断してもらう方法です。
こちらはどうしても費用がかかるのは避けられませんが、広告出稿媒体側へのヒアリングと同等、あるいはさらに確実な情報が得られます。
まだまだある!各業界の規制表現まとめ
ちなみに・・・広告表現には上記の他にも以下のような規制表現がありますので簡単にご紹介しておきます。
虚偽の表現・誇大表現 優良誤認表示
嘘を含んだ広告表現や誇大表現を使ってはいけないというルールがあります(当然といえば当然ですが)。
例:
- 果汁100%ではないジュースなのに「果汁100%ジュース」
- 機械生産の商品なのに「職人の手作り」
- 他の製品にも備わっている機能なのに「この操作ができるのはこの機種だけ」
- シルク100%でないパジャマに「シルク100%」と表示
- 人造ダイヤを使用しているが、「天然ダイヤを使用したジュエリー」と表示
- 実際は同業他社も使っている原料にもかかわらず、「同業他社が使っていない特別な原料を使っている 」と表示 など
これらは優良誤認表示に抵触する恐れがあります。
有利な条件だと誤解させる表現 有利誤認表示
価格や取引条件について誤解を招く表現や、根拠のない曖昧な表現を用いることは禁止です。
例:
- 実際は、ずっと同じ価格で販売しているのに「今だけこの価格!」
- 調査や根拠が無いのに「合格率」「お客様満足度」「リピート率」「売上」などの数値を入れる
- 「●●ランキング1位(自社調べ)」※自社調べのランキングは、客観的な指標にはならない
- 根拠が無いのに「日本で一番安い」
- 閉店の予定がないのに「閉店セール」
- 基本価格を記載せず「今なら半額」と表示(実際は半額と認められない料金)
- 他社製品と同量程度しか入っていないにもかかわらず、「他社製品の2倍の内容量」と表示 など
これらの表記は有利誤認表示として、広告では回避すべき表現です。
事実のない二重価格
定価と割引された販売価格を並べて、消費者に安いと認識させる表現も危険です。 二重価格の表示をするときは、明確な根拠がある比較対象価格(メーカー希望小売価格、通常価格など)を使わなくてはならないという決まりがあります。
少し前までは黙認されていた表現でもあるので、要注意でしょう。
おとり広告
お客さんを集めるために作る嘘の広告もNGです。
- 不動産会社の場合に実際は取り扱いのない物件を掲載する
- 期間限定や数量限定なのにその旨をわざと書かない
など、業界団体からツッコミが入るケースもありますのでご注意ください。
最上級表現
「日本一」「最高」「最小」「ナンバーワン」といった表現は、明確な裏付けがなければ使ってはいけないという決まりもあります。
なお根拠があっても、その事実を合わせて表示しなければ使うことはできないのがミソです。
比較表現
他社より優れていることを示す表現も、最上級表現と同様に裏付けなしでは使用できません。
使用する場合は客観的根拠があること、数値を引用していることを確認しましょう。
- 日本一安い
- 他社サービスよりも速い
- 芸能人の○○も使用
などは要チェック表現です。
激安表現
「激安」「超特価」「投げ売り」「破格」などの価格に関する用語も禁止です。
使用するには、明確な根拠を合わせて表示する必要があります。
- 激安商品、今だけ!
- 投げ売り価格なので、今買わないと損
こうした表現が出てきた場合も注意しましょう。
完璧表現
「絶対」「完全」「完璧」「永久」といった表現は、断定することが難しいため使ってはいけないルールです。
- 完璧に体型をカバーする
- 永久に崩れない仕上がり
こうした表現を使う外注先にはご注意ください。
効果・効能をうたう表現
体に影響を与えるかのような表現をして、医薬品と誤解される表示はできません。
病気の治療や予防を目的としている表現も禁止です。
医薬品や化粧品の場合でも、承認された効果効能以外を書いてはいけないという決まりがあります。
第三者の意見として体験談やお客様の声を載せる場合でも、効果効能を書くのはNGなので注意しましょう。
例:
- 腸内を活性化
- 便秘が治るお茶です
- 効果が実感できます
- シミ・シワ取りに効果絶大
- アトピーが治るサプリ
- 〇ヶ月で必ず〇キロやせる
- これを飲むだけで病気が治る
- たった10分で小顔になれる!
宅建業法違反
- 仲介手数料が0円の物件はほぼないにもかかわらず、「仲介手数料0円物件多数!」と表示
- 1LDK+S(納戸)の物件を「2LDK」と表示
などは宅建業法違反になる可能性があります。
外注が作った広告がガイドライン違反だった場合の対応策
では、外注が作った広告がガイドライン違反だった場合の対応策を解説します。といっても、結論から言えば広告を作り直すのがベストでしょう。
というのも、広告を外注に出すと、基本的に広告制作者はクライアントの指示通りに作って納品してくることが多いため、広告の中身がガイドライン違反になっていることに気づかないケースが多いのです。
そもそも本来あるべき姿は「発注元の希望を最大限尊重しつつ規制に沿った広告を作る」なのですが、これが出来ていないこともよくあります。
特に、こうした薬機法関係の広告のプロではない外注先の担当者は、自社の作った広告がガイドライン違反だとは思っていないケースが多く、結果として広告を修正せずにそのまま出稿してしまうケースもあります。
なお、Google広告でガイドライン違反(ポリシー違反)を繰り返すと、アカウントが強制停止される可能性があります。
② 外注先との協議(必要に応じて)
違反箇所が特定できたら、必要に応じて外注先との協議を行います。違反内容を伝え、外注先からも意見を聞きながら修正案を考えましょう。
このとき、外注先がどれだけ広告ガイドラインに精通しているか、また変更への対応力について確認することも重要です。
協議にならない場合や、違反箇所を改善する提案が得られない場合には、他の広告制作会社を検討するのも一つの手です。
③クリエイティブの修正
ガイドライン違反の広告は、最悪の場合行政処分を受けるリスクが高まりますし、場合によっては炎上のリスクもあるため、広告の作り直しをお勧めします。
ではどうやって作り直すか、ですが・・・折角ですのでプロの指導・助言で適切な広告を出しつつ、広告担当者を自社で育てるという方式はいかがでしょう。
当社は伴走型のインハウス支援会社として、広告のプロを育てるお手伝いもしています。
広告のプロを育てて広告の品質を上げ、かつ将来的にノウハウは自社に蓄積できる。まさしく一石二鳥ですので、是非ご相談ください。
④広告の再出稿(再審査など)
正しくクリエイティブが修正できたら、次は広告の再出稿です。
一度広告ガイドライン違反となった広告は、再審査が必要になることがありますので、必要な時間を見越して計画しましょう。
広告ガイドラインは、プラットフォームや業界により異なります。再審査のプロセスについても事前に確認しておくと良いでしょう。
⑤再発防止策を社内で共有する
最終的に大切なのは、再発防止策を社内で共有することです。
ガイドライン違反は、一度でも起これば、その後の広告の信頼性を下げる原因となります。今回特定された違反箇所や修正方法などを、必要なメンバーと共有しましょう。
ガイドライン違反を起こさないためのルール作りや、定期的な情報更新などを行ない、同じ過ちを繰り返さないための環境作りをすることが必要です。
広告ガイドラインに関するよくある疑問・質問
広告ガイドラインというと何やら難しく聞こえますが、実際にはビジネスにとって非常に重要な存在です。
ここでは、広告ガイドラインについてのよくある疑問や質問について解説していきます。
Q.広告ガイドラインを守るのがなぜ難しいのですか?
A.広告ガイドラインが難しい理由は、主に以下の2つです。
広告ガイドラインが定期的に更新されるため ガイドライン自体が分かりづらい場合があるため
広告ガイドラインは定期的に更新され、新しい製品やサービス、社会情勢の変動などに応じて、細かな規定が頻繁に変更されていきます。
最新のガイドラインについて常に情報をキャッチアップし、理解して広告作成に反映させなければならないのです。
続いて、ガイドライン自体が分かりづらい場合について解説します。 業界用語が多い、法律用語が使われる、統計や数値が出てくる、解釈が難しい表現があるなどが例として挙げられます。
ガイドラインが分かりづらいと「これが違反なのかどうか」を判断するのに時間がかかり、それが実際に広告の制作・運用に影響を及ぼすこともあるでしょう。
Q.広告制作を請け負っている企業は、最新の広告ガイドラインや動向に沿った広告を制作してくれますか?
A.残念ながら、全ての企業が対応しているわけではありません。
広告制作を請け負っている企業の中には、最新のガイドライン」や「広告動向」について最新情報を把握し、それに基づいて広告を作成するところもあります。
しかし、全ての企業がそのような対応をしているわけではありません。
ガイドラインの変更情報を迅速にキャッチし、適切な広告を制作するためには、広告制作に関わるスタッフ全員が同じレベルで情報を共有・理解する必要があります。
「ガイドラインが更新された」「新たなルールが設けられた」などの情報は業界内で共有されますが、それを素早く取り入れて対応する能力は、企業ごと、あるいは担当者ごとに差があるのが現状です。
Q.広告ガイドラインに関する相談はインハウス支援企業にも相談できますか?
A.広告ガイドラインに関する相談は、インハウス支援企業にも可能です。
インハウス支援企業は「御社のチームの一員として寄り添いながら一緒に広告運用を行うこと」をミッションとしており、広告ガイドラインについても深く理解しています。
また、インハウス支援企業は、広告ガイドラインの最新動向や適用事例など、広告運用に役立つ情報を提供してくれます。
「広告代理店ではなく、伴走型インハウス支援が可能な会社へ相談する」という選択肢は、広告運用の精度向上に繋がることでしょう。
広告ガイドラインは、時代や社会の変化に伴って更新されます。広告作成や運用をする上で、最新のガイドラインを把握し、遵守することは非常に重要です。
ガイドラインへの理解を深め、最新情報を逐次チェックすることで、よりよい広告運用ができるでしょう。
まとめ
今回は、広告のガイドライン違反事例と、ガイドライン違反の対処法を解説しました。こうした事例は意外と大手に依頼しても出てくる話なので、おかしいと思ったらすぐに広告のプロへセカンドオピニオンを取るようにしましょう。
弊社では伴走型のインハウス支援により、 「広告担当者の育成」を承っております。
・広告運用の品質はプロ水準
・実際に運用するのは貴社(貴院)広告担当者
・広告代理店への外注・委託と異なり、ノウハウやテクニックは自社(自院)に残る
といった特長があります。
さらに弊社は「薬事法管理者在籍のインターネット広告代理店」です。
よって薬機法・医療広告ガイドライン等の各種関連法規についても対応が可能となっており、さらに
・YMAA(薬機法、医療広告ガイドラインの知識を習得した広告取扱担当者)
・KTAA(景品表示法・特定商取引法の知識を習得した広告取扱者)
も取得しておりますので、高い水準での広告運用をご提供可能です。
どんな些細なご質問でも構いません!
まずはお気軽にお問い合わせください。