2020年に巻き起こった「ステラ漢方事件」では、広告業界のみならず日本全体に影響が及びました。広告業界に携わる人は知っておくべき事件でもあります。
今回の記事では、事件が起こった背景や概要についてご紹介するとともに「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、いわゆる薬機法で注意すべき表現を徹底的に解説していきます。
前提として、すべての販売製造会社やインフルエンサーは、薬機法に準拠し、かつ消費者に魅力を伝える広告を制作・運用することが求められます。
また、広告の効果を高めて運用しつつ社内にノウハウを蓄積していくためには、インハウス支援の活用がおすすめです。お困りの際は広告のプロである当社にぜひご相談ください。
目次
ステラ漢方事件とは?
ステラ漢方事件は、日本における医薬品広告の規制に関する転換点とも言うべきほど注目された事件です。
この事件では、漢方薬の製造販売を行っていた会社の従業員だけでなく、広告を投稿したインフルエンサーの男性を含む6名が医薬品の広告を規制する薬事法に違反したとして逮捕されました。
ステラ漢方事件の概要
ステラ漢方事件は、2020年に日本で発生し、医薬品広告の規制に関する転換点となった事件です。
この事件では、漢方薬の製造販売を行っていたステラ漢方の従業員や広告代理店の社長ら6人が、医薬品医療機器等法(薬機法)に違反した疑いで逮捕されました。
具体的には、医薬品として承認されていないサプリメント「肝パワーEプラス」について、「肝臓疾患の予防に効果がある」と広告に表示したことが問題となりました。
この事件は広告業界に衝撃を与え、広告主や広告代理店、インフルエンサーなどが薬機法に準拠した広告制作・運用を求められる大きなきっかけにもなったのです。
この事件に関わった会社は多数ありますが、まず販売を名目上委託されていた事業者が、同製品がさまざまな病気や症状に効果があると標榜し、科学的な根拠を示さず「体験談」という方式で誇大かつ虚偽の主張をしていました。
※この体験談記事自体は記事LPという枠組みでよく取り組まれているものではあります。
この事件は、消費者を被害から守り、また業界の信用を維持するためにも重要な転換点と言えるでしょう。適切な広告を行うことの重要性が改めて問われているのです。
なお、この問題が顕在化したのはインフルエンサーの存在が大きいと言えます。SNSなどで多大な影響力を持っている方が、いわば広告塔になって宣伝したことで、情報がより広く一般的に拡散されることになったのです。
なお、そもそも体験談を用いた広告については、薬機法で大きく制限されていることを押さえておきましょう。
ステラ漢方事件の背景
日本では、薬機法によって効果効能をうたう誇大広告や虚偽の広告が禁じられています。また、承認されていない医薬品の広告も禁じられています。規制の理由は消費者の健康や権利を守るためで、薬機法によって罰せられる対象は「何人(なんびと)も」と定められています。
この「何人も」には、商品の販売元の会社だけでなく、関わった広告会社やインフルエンサーも含まれます。
ステラ漢方の広告事件では、Webマーケティング会社が関わっていたことが示されました。ステラ漢方事件では広告に関わっていた大手Webマーケティング会社の従業員も逮捕されましたが、これが製造元以外での初の摘発事例となっています。
この騒動は、広告業界にかなりの衝撃を与えました。広告代理店やインフルエンサーには、広告のあり方を見直すとともに、責任感を持って消費者に誠実な広告を発信していくことが求められます。
ステラ漢方事件で問題となった広告表現
ステラ漢方事件で問題となった広告表現は、ステラ漢方が販売する健康食品「肝パワーE+(プラス)」の広告においてのことです。
この製品が医薬品の承認を得ていないのに、ステラ漢方はウェブ広告において「脂肪肝がお酒も食事も我慢せず正常値に」や「ズタボロだった肝臓が半年で復活」などと広告をしました。
これが、薬機法第68条(未承認医薬品の広告の禁止)に違反したとして問題になった、というわけです。
ステラ漢方事件の問題点
ステラ漢方事件の問題点としては、以下の3つが挙げられます。詳しく見ていきましょう。
問題点1.医薬品と誤認しうるような誇大な表現
上でも述べたように、ステラ漢方は自社の健康食品の広告において、「脂肪肝がお酒も食事も我慢せず正常値に」や「ズタボロだった肝臓が半年で復活」といった医薬品を誤認しうるような誇大な表現をしていました。これが薬機法違反となりました。
まず何より、このような表現を広告でしていたこと自体が大きな問題点です。
問題点2.アフィリエイト広告までチェックが行き届かない
ネット広告の技術的な進展により、誰でもアフィリエイト広告を出せるようになりました。
これは、商品の情報の拡散という意味では効果がありますが、同時に、広告運用の担当者が広告の内容を完全に把握することが難しくなっていることも意味します。
この事件においても、アフィリエイト広告までチェックが行き届かなかった可能性が考えられます。
問題点3.広告の責任の所在が不透明
ステラ漢方事件は、アフィリエイト広告も含む、ウェブ広告の構造的な問題点も浮き彫りにしました。
ウェブ広告においては、広告主(ここではステラ漢方)や、広告代理店だけでなく、ウェブサイトに広告を配信するプラットフォームであるアドネットワークに関わる配信事業者や、媒体社も関わってきます。
このような構造において、責任の所在が不透明となり、法律の遵守意識があまり醸成されないままチェックが甘くなってしまった問題点も指摘されています。
違反は逮捕リスクあり!薬機法で遵守すべき広告表現
薬機法とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称であり、消費者の利益を守るために定められた法律です。薬機法が適用される範囲は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器です。
ステラ漢方事件は、この薬機法などの法律違反に対して、広告表現に携わる側にもさらなる対策が必要であることを浮き彫りにしました。
ここからは、薬機法を踏まえた上でのサプリの広告で注意すべき注意表現について解説していきます。
1.効果効能をうたう表現
まず、効果効能をうたう表現には注意しなければなりません。医薬品に該当しない商品では、疾病や症状の治療効果を宣伝することは禁止されています。
なお、栄養機能食品として認められている場合は、一日の摂取可能量の範囲内での標榜が可能です。例えば「ビタミンCを何グラム含んでいます」といった表現は可能になります。
ただし、他の商品、薬剤や治療法を劣らせるような表現は、景品表示法における「優良誤認」や「有利誤認」として罰則の対象となる可能性がありますので、注意が必要です。
2.摂取時期・用法・用量
サプリでは、摂取時期や用法用量を指定した宣伝はできません。と言うのも、摂取タイミングなど用法容量を指示すると「薬」として消費者が認識してしまう恐れがあるからです。
これを踏まえて、サプリでは断定表現を用いずに「一日3粒を目安に」「いつでもお飲みいただけます」などの表現が用いられています。
3.未承認薬剤に関する表現
医学的な効果を宣伝する表現を含む広告は、健康や生命に重大な影響を及ぼす可能性があるため、厳密な審査が行われています。例えば「日本未発売」「海外では承認されている成分」などを前面に押し出した広告もNGとなります。
これはサプリであっても同様で、承認されていない薬剤に関する表現は禁止されています。これは偽情報や不正な宣伝による患者の誤解を避けるためです。
サプリと薬、両者の法律的な境界線はありますが、消費者にとっては「よく分からない」「効果がありそう」との認識であることが多いでしょう。そのため、広告の出し方や文言によってはたいへん誤認されやすいものと言えるのです。
4.医学的な根拠に基づかない・正当性のない表現
医学的な根拠に基づかない、正当性のない表現についても薬機法で禁止されています。
消費者を誤認させたり不安にさせたり、不当な期待をもたらすことを防ぐのが目的です。消費者が正確な情報に基づいて選択をすることができるよう、薬機法は厳格な規制を設けています。
5.安全性について不正確な表現
繰り返しになりますが、消費者の健康や権利は尊重されるべきものです。効果や安全性に関する正確な情報がないまま広告を表示して販売することは、消費者にとってリスクが伴います。
6.「医師がおすすめする」
「医師がおすすめする」などの表現は注意しなければなりません。あたかもその製品が医学界全体から承認・推奨されているかのような印象を与え、消費者に安全で有効な製品であると誤解させる可能性があるでしょう。
※ここで『上記すべてのNGを詰め込んだ画像』を見てみましょう。
こういった訴求は一発でアウトとなります。
科学的根拠や臨床試験に基づいていれば、根拠を示したうえで相応の言葉を用いた広告が可能なケースもあるでしょう。
その場合ももちろん「医師推奨」イコール「すべての医師が賛同している」と表すわけではありませんから、不適切な商品にこれが使用されると、業界全体の安全性や信用性は大きく揺らぐことになりかねません。
不適切な広告を使用した際のリスクを解説
広告の使用は、ビジネス展開にとって非常に大切です。
しかし、事を急ぎすぎて広告法令を守らなかったり、または十分な知識がないまま広告を作成すると、予想外のリスクを背負うことになってしまう可能性があります。
「ステラ漢方事件」などはその一例です。
以下では、不適切な広告を使用した場合のリスクについて、具体的に解説します。
罰則が課される・逮捕される
広告法令を遵守しない広告を作成した場合、法的制裁を受ける可能性があります。罰金や懲役などの罰則が科されるほか、最悪の場合、逮捕に至る可能性も否定できません。
ステラ漢方事件のように、商品の効果や性能を誤解を招くように過大に表現した広告は、消費者被害を招くとして法的なトラブルに発展します。実際、ステラ漢方の社長は、優良誤認的な表示をしたとして逮捕されました。
また、2023年10月からはいわゆるステマ規制が始まりますので、こちらも頭に入れておきましょう。
広告作成の際は、常に法令遵守を心がけることが大切です。
炎上する
現代では、炎上リスクを避けては通れません。広告が不適切だと受け取られると、SNSや口コミサイトなどで大々的に炎上する可能性があります。
炎上すると、企業のイメージは一気に地に落ちます。一度炎上した企業が、そのダメージから立ち直るのは非常に困難と言えるでしょう。
ネットでは情報があっという間に広がるため、一度炎上が始まると、それを抑制することは非常に難しいのです。
ブランドや企業イメージが低下する
不適切な広告は、企業の信頼性やブランドイメージを大きく損ないます。
一般的に、消費者は、信頼できない企業から商品やサービスを購入することはありません。
企業のイメージが悪化した場合、その修復には時間と労力を要するだけでなく、大きなコストが発生する可能性もあるでしょう。
広告主と関係が悪化する
広告を通じて商品やサービスを発信することは、企業にとっては収益創出のための重要な手段です。
しかし、不適切な広告を使用してしまうと広告主との関係が悪化し、広告主からの広告掲載を拒否される、あるいは協力を打ち切られてしまう可能性もあります。
訴訟に発展する
法令に違反する広告は、消費者に誤解や被害を与える可能性があります。そのため、不適切な広告を出した企業は、それが原因で消費者から訴訟を起こされることもあるでしょう。
企業にとって、訴訟は経済的なダメージが大きいだけではなく、社会的評価の低下や信頼性の失墜にもつながってしまいます。
炎上・逮捕リスクのある広告を使用しないための対処法
広告制作・運用の中で、適切でない内容や表現を避けるためにはどのような工夫や対策が必要なのでしょうか。
続いては、炎上・逮捕といった深刻なリスクを回避するための具体的な方法について解説していきます。
社内教育を徹底する
最初に行うべきは、「社内教育の徹底」です。広告表現やそれにまつわる法規制を全ての関係者が理解し、意識できるような教育体制をつくることが求められます。
広告主から提供される情報を正確に伝える 誤解を生まないような表現を学ぶ 誇張表現の過度な使用を避ける ユーザーの不安を煽るような表現を避ける
これらの内容を改めて共有して、不適切な広告を避けましょう。
リスク管理チーム等を設置する
広告業務において、法律や規範に抵触する可能性のあるリスクを発見・管理を専門に行う「リスク管理チーム」等の設置を検討するのも対処法の一つです。
例えば、制作した広告が適切かどうかチェックを行ったり、定期的な研修を実施する等、スタッフが適正な広告を制作・運用できるような体制をつくることが求められます。
広告をプロや弁護士等に見直してもらう
特に法律に詳しい専門家に見てもらい、制作時に把握しきれなかったリスクを洗い出すこともできます。もし懸念事項が見つかったら、その内容を共有して再発防止につなげましょう。
工程が増えて制作費用が高くついたとしても、リスク回避につながれば結果的に「安く済む」と言えます。
クリエイティブの制作や運用をプロに任せる
広告運用全体をプロに任せるのも、選択肢の一つです。
専門的な知識や技術を持ったプロの手に任せることで、質の高い広告制作が可能となります。自社で全てを手掛ける場合には見逃しがちなリスクも、プロの目や技術によって防ぐことができます。
このとき、「伴走型インハウス支援」を行う会社への依頼もおすすめです。
伴走型インハウス支援では、自社の広告運用チームの一員として寄り添いながら一緒に広告運用を行うことで、より深い理解と正確な広告制作・運用が可能になります。
ステラ漢方事件に関するよくある質問・疑問
続いては、ステラ漢方事件に関する質問や疑問を紹介します。
ステラ漢方事件以外にも、広告に関する事件はあるのか、法令を遵守するための社内教育はどうすれば徹底できるのか、そしてインハウス支援会社に社内教育の支援や広告の見直しを依頼できるのか、といった質問にお答えします。
Q.ステラ漢方事件以外にも、広告に関する事件はありますか?
A.江崎グリコのガム比較広告、クロレラチラシ配布差止等請求事件が例として挙げられます。
2006年には、ロッテがグリコのキシリトールガムと自社のキシリトールガムを比較した広告を出して問題となりました。最終的には、ロッテが広告の一部を訂正することで和解が成立しています。
また、2017年1月にはサン・クロレラ社が最高裁判所にて判決を受けました。
これは、同社が発行した折込チラシで医薬品と誤認させる効能効果を謳っており、景品表示法と消費者契約法に違反しているとして訴訟に発展したものです。最終的には、チラシの配布差止めと、違反内容を告知する広告の掲載が命じられました。
Q.法令を遵守するための社内教育を徹底するにはどうしたらいいですか?
A.全員が法令を理解し、それを遵守する意識を持つことが重要です。
具体的には、定期的な法令教育を行い、その重要性を社内全体で共有しましょう。また、新しい法令が発効した際はすぐにその内容を共有し、どのように対応すべきかを理解しましょう。
法令遵守は、企業の信頼性を保つために必要不可欠なことです。
Q.インハウス支援会社にも社内教育の支援や広告の見直しを依賴できますか?
A.はい、依頼できます。
実際に「伴走型インハウス支援」が広く活用されています。
これは、広告運用を依頼するだけでなく、御社のチームの一員として寄り添って一緒に広告運用を行うものです。プロとの二人三脚で、法令遵守についての社内教育や広告制作の見直し、さらには最新の広告トレンドを学ぶ機会も提供されます。
伴走型インハウス支援を活用すれば、自社の広告運用能力を高めながら法令に適合した広告活動を行うことができます。
まとめ
今回の記事では、2020年に問題になった「ステラ漢方事件」の概略を説明するとともに、サプリの広告で注意すべきポイントについてご紹介してきました。
ここでは薬機法にまつわるポイントを解説しましたが、商材ごとに注意すべきポイントはさまざまあります。消費者が不利益を被ることにならないためにも、改めてチェックしておきましょう。
さらに、薬機法以外にも景品表示法などの遵守すべき法律が存在します。商品の魅力を伝えたうえで「この表現は法律に抵触しないか」と考えるには、多くの時間や手間がかかってしまいます。法規制を全て理解したうえで効果的な広告を打ち出すことは難しいものがあります。
わたしたちは、広告のプロとして各種法令やガイドラインを遵守しながら広告のお手伝いをしています。広告にまつわる疑問や不安がありましたら、ぜひご相談ください。
弊社では伴走型のインハウス支援により、 「広告担当者の育成」を承っております。
・広告運用の品質はプロ水準
・実際に運用するのは貴社(貴院)広告担当者
・広告代理店への外注・委託と異なり、ノウハウやテクニックは自社(自院)に残る
といった特長があります。
さらに弊社は「薬事法管理者在籍のインターネット広告代理店」です。
よって薬機法・医療広告ガイドライン等の各種関連法規についても対応が可能となっており、さらに
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・KTAA(景品表示法・特定商取引法の知識を習得した広告取扱者)
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